石川啄木が1907年(明治40年)に盛岡中学校校友会雑誌に寄稿した「林中の譚(たん)」を原作とする絵本です。石川啄木記念館(盛岡市玉山区渋民)で販売されている絵本で、少し前に注文していたものが届きました。
サルと人と森 表紙

 


石川啄木記念館学芸員の山本玲子さんが啄木の「林中の譚(たん)」を訳した文章が添えられています。絵は、多摩美術大学卒業の鷲見春佳さんが描いています。

山本さんの訳がとてもよく、鷲見さんの絵もとても魅力的な絵本です。残念なのは本文の絵がカラーでないことで、それだけ絵が素晴らしいのです。

養老孟司氏がマンガについて、絵が漢字でセリフがルビだと表現していたことを思い出しました。絵(漢字)が視覚的、セリフ(ルビ)が聴覚的で脳の中では別な場所を同時に使って読んでいるそうです。絵本も同じなのだと思います。


この絵本は人気があるようで、かなり売れているそうです。特に震災後には多くの注文があったようです。

年老いた猿と人間との森における会話により構成されています。現代社会に警笛を鳴らしているということで、啄木の先見性が評価されています。

啄木は同県人でありながら、歌人というイメージだけでした。この絵本を読み、啄木を再発見する機会となりました。


猿の言葉は重いもので、ズシズシと響いてきました。人間は猿を見下していますが、本当は猿に見下されている(というより憐れに思われている)のです。

サルと人と森

文明や経済の発展だけを求めることで、本当は自分の首を絞めていることにいつになったら気付くのだろうと思わされました。自分自身を含めて。(^^ゞ

100年以上前から、警笛が鳴らされてきたにもかかわらず、人間は愚かなものだと思い知らされました。


話は少しそれますが...、

地球温暖化はCO2が主犯とされ、CO2が環境問題の悪の権化だとされてきました。「環境問題解決=CO2削減」という図式がPRされてきたと思います。その図式の中で原子力発電はCO2削減に非常に有効であるということが言われて来ました。この点についてずっと疑問に思っていました。原子力発電所で事故が起きれば、地球温暖化の比ではない環境破壊に繋がりますから。環境とは何なのか、本当の「不都合な真実」とは何なのかと。

人間の歴史は「訳の分からない図式と訳の分からない宣伝」によって作られてきたのです。



よく言われることですが、本当の環境とは何かを考えるべき時期が来ているのだと思います。自分自身を含めて、人間がおごりを捨てて本当の幸福を考え直すことが必要です。そのことを啄木が言っているのだと思います。これは難しい問題ですが...。